香料を活用した果汁代替
需給のひっ迫や品質の低下、価格の高騰など、果汁に関連する課題の解決策として、乳化香料を中心とした香料を用いて果汁を代替する方法を紹介します。
目次
・果汁の供給量や価格は果実の生産状況により変動
・果汁の配合量低減や安価品の使用が商品設計の妨げに
・解決策:香料を活用することで果汁を代替し、商品の品質を維持・向上
- 果汁の香味発現に着目
- 果汁の香味発現を再現する香料技術
- 応用例:グレープフルーツ果汁代替ソリューション
果汁の供給量や価格は果実の生産状況により変動
さまざまな加工食品に広く利用される果汁ですが、原料となる果実の生産量減少に起因して、調達面や品質面でしばしば課題を生じます。例えば、近年では、グレープフルーツ果汁のひっ迫と高騰が顕著です。日本で消費されるグレープフルーツ果汁は、20年前までは6割強を米国からの輸入に頼っていましたが、2005年にフロリダを襲ったハリケーン・カトリーナの影響や、病害、寒波、バイオエタノールの需要拡大によるトウモロコシへの転作によって米国のグレープフルーツ生産量はここ20年で約 1/4 に減少し、これに連動してグレープフルーツ果汁の輸入量はピーク時の約4割まで低下、キロ当たり輸入額は倍増しています。
果汁の配合量低減や安価品の使用が商品設計の妨げに
このように、果汁は年ごとの果実の生産量の増減によって供給量や価格が変動するという特性があります。供給やコスト上昇リスクを避けるために果汁の配合量を減らすと、果汁本来の厚みのある香味が失われ、満足のできる香味設計にはなりません。また、価格の上昇を受けてコスト削減のために安価な果汁を使用する場合、イモ臭や薬品臭などの臭いが香味設計の妨げとなり、フレッシュな香味を再現できないことがあります。
解決策
香料を活用することで果汁を代替し、商品の品質を維持・向上
果汁の香味発現に着目
果汁の香味発現を香料で再現することで果汁の一部を代替することができます。果汁の香味発現は、穏やかなトップノートとミドルに盛り上がる香味、ラストまで途切れないキレのある厚みが特徴です。このような香味発現は主にトップノートの付与に寄与する水溶性香料だけでは再現ができません。
果汁の香味発現を再現する香料技術
果汁に近い香味を表現するには、乳化香料を中心にした香味設計が適しています。乳化香料とは香気成分を含む油を乳化した水分散性の香料製剤です。さらに、果汁感をエンハンスする機能性香料を併用することで、果汁と同じような香味発現を再現することができます。
果汁の香味発現イメージ
乳化香料の特徴
1. 水に溶けにくい香気成分を乳化して添加することで厚みを付与できる
2. 水溶性香料と比べてミドルからラストに持続する香味発現を有する
3. 飲料に濁りを付与し、視覚的な果汁感の演出ができる
応用例:グレープフルーツ果汁代替ソリューション
糖や酸の組成をグレープフルーツ果汁に合わせ、ペクチンでテクスチャーを、苦味料製剤で苦味を、複数の色素製剤の組み合わせで色調を再現しました。香味を再現するための香料設計として、ミドルに香味発現する乳化香料に水溶性香料を重ねてトップノートのフルーティーさやフレッシュさを補い、さらに果汁感をエンハンスする機能性香料でコクを底上げしました。
果汁代替ソリューションの官能評価結果
グレープフルーツの他にも、オレンジ、アップル、ピーチ、グレープ、パイナップルなど広範に使用される果汁や、マンゴーやグァバのような比較的高価格の果汁を代替できるアプリケーションを用意しています。 飲料だけでなく、フルーツソースやゼリー、冷菓など加工食品全般に使用できます。
果汁の供給やコストにご不安をお持ちの方は、お気軽に問い合わせください。
※掲載データは、当社評価によるものです。ご検討の際には、十分な試験をお願いいたします。
(2022年9月)