鉄の風味を抑えた、鉄分強化食品をつくるには

鉄分は必須ミネラルですが、普段の食事からは十分な量の摂取がしにくく、不足すると貧血などの原因になります。一方、鉄強化食品に使用される鉄素材には鉄特有の風味が強いものが多く、日常的においしく摂取できる鉄分強化食品の開発が求められています。当社の鉄製剤「FEベースシリーズ」は難溶性の鉄素材を使用しており、風味への影響がほとんどありません。また、独自製法により水中での懸濁安定性を高めており、さまざまな飲料や加工食品に対しておいしさを損なわずに鉄分強化をすることができます。

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目次

     ・重要なのに不足している鉄分
     ・鉄分強化に使用される食品添加物と課題
       - 代表的な鉄分強化に使用される食品添加物
     ・味に影響せず、食品中で安定的に懸濁するFEベースシリーズ
       - FEベースシリーズの特徴
       - 風味への影響の少なさ
       - 懸濁安定性の高さ




    重要なのに不足している鉄分

    鉄分は、酸素の運搬や筋肉の代謝、体の成長などにかかわる重要な栄養素です。鉄分が欠乏すると、貧血や運動機能、認知機能の低下などを招くことが知られています。しかし、日本人が摂取している鉄分の量は、男性は幼若年層で、女性は幅広い年齢層で「日本人の食事摂取基準」で定める推奨摂取量に達しておらず、不足ぎみとなっています。不足しがちな鉄分を補うため、市場には鉄分を強化した食品が多数販売されています。


    鉄分強化に使用される食品添加物と課題

    鉄分強化を目的として食品に使用される食品添加物は、動物由来のヘム鉄とそれ以外の非ヘム鉄に分けることができます。また、非ヘム鉄は水溶性と難溶性に分類することができます。

    代表的な鉄分強化に使用される食品添加物

    分類 代表的な鉄素材 鉄特有の風味
    ヘム鉄 ヘム鉄 非常に強い
    非ヘム鉄 水溶性 塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、硫酸第一鉄 強い
    難溶性 ピロリン酸第二鉄 弱い

    ヘム鉄は鉄と有機化合物(ポルフィリン)の錯体で、畜肉や魚肉などに含まれている成分です。ヘム鉄は非ヘム鉄と比較して体内への吸収性は高いですが、非ヘム鉄より価格が高く、原料由来の臭いがあり、サプリメント以外の一般的な食品にはあまり利用されていません。
    一方、非ヘム鉄はヘム鉄と比較して体内への吸収性は低いですが、ヘム鉄より鉄特有の風味が少ないため、様々な用途で使用されています。非ヘム鉄は、クエン酸鉄などの水溶性の鉄素材と難溶性のピロリン酸第二鉄に分けることができます。なお、難溶性の非ヘム鉄であっても、胃酸での分解を経て、他の非ヘム鉄と同様に体内に吸収されます。
    水溶性の非ヘム鉄は水に溶けることで鉄特有の風味を生じます。一方、難溶性の非ヘム鉄であるピロリン酸第二鉄は中性領域では水に溶けず、使用する食品の風味に影響しにくい素材です。しかし、飲料や液体の食品中においてはただちに沈殿してしまいます。
    このように、鉄分強化のための原料選びには、「風味への影響の低減」と「沈殿の防止」という課題が存在していました。

解決策

風味に影響せず、食品中で安定的に懸濁するFEベースシリーズ

これらの課題を解決するために開発されたのがFEベースシリーズです。難溶性のピロリン酸第二鉄の粒子を微細化し、飲料や液体の食品中に長期間安定に分散させる技術によって、鉄特有の風味の少なさと懸濁安定性の維持を両立しました。


FEベースシリーズの特徴

 ● 鉄特有の風味がほとんどしない
 ● 分散基剤由来の風味が少ない
 ● 水中で高い懸濁安定性を持つ

風味への影響の低減

FEベースシリーズは、鉄素材に難溶性のピロリン酸第二鉄を使用しているため、鉄特有の風味が少ないことが特徴です。
また、使用している鉄粒子を懸濁させる分散基剤も製品の風味の少なさに寄与しています。一般的に基剤はグリセリン脂肪酸エステルなどの界面活性剤が使用されますが、これらには特有の風味があります。FEベースシリーズの基剤に使用している多糖類の一種であるガティガムはほとんど風味がないため、飲料やヨーグルトなどのさまざまな食品をおいしさはそのままに鉄分強化することができます。

鉄粒子の被膜に用いる基剤の違いによる風味の比較*


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高い懸濁安定性

ピロリン酸第二鉄をそのままの状態で飲料や液体の食品に配合すると沈殿してしまいますが、FEベースシリーズは水中でも安定な懸濁状態を保つことができます。

FEベースシリーズの溶状


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FEベースシリーズはガティガムを使用し、懸濁安定性を高めています。
鉄粒子を懸濁させるためにガティガムで鉄粒子の表面をコーティングしていますが、一般的に使用される界面活性剤であるグリセリン脂肪酸エステルなどを使用した場合と比べて粒子表面の被膜が厚く、また被膜表面がマイナスに帯電していることが特徴です。これによって、レトルト殺菌のような高温処理や長期間の保存でも懸濁状態を維持することができます。

FEベースシリーズの懸濁安定化イメージ


FEベースシリーズの分散安定化模式図

懸濁安定性に優れたFEベースですが、pH4以下の酸性領域で使用する場合、ピロリン酸第二鉄が酸に可溶化し鉄特有の風味を生じることがありますので注意が必要です。なお、FEベースシリーズには、酸性領域でも風味を抑制した製品もラインアップしています。


鉄分強化食品の開発をお考えの方に、検討される食品や使用条件に適した製品をご紹介いたします。下のお問合せボタンより、お気軽に問い合わせください。



※掲載データは、当社評価によるものです。ご検討の際には、十分な試験をお願いいたします。

(2021年12月)

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