乳酸菌や耐熱性芽胞菌に効果を発揮する保存料「ナイシン」

食肉製品やチーズなどを日持ちさせる上で、乳酸菌や耐熱性芽胞菌の増殖抑制は難しいことが知られています。ナイシンは食品のpHやたん白の影響を受けにくく、乳酸菌や耐熱性芽胞菌に対して高い静菌効果を示すため、食肉製品のハンバーグやチーズ、卵加工品のだし巻き卵などにおいて風味を損ねずに保存性を高めることができます。

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目次

 ・保存料・日持向上剤が必要とされる理由
 ・食肉製品、チーズ、卵加工品の日持ちの課題:乳酸菌、耐熱性芽胞菌の増殖を抑えにくい
 ・解決策:ナイシンにより乳酸菌や耐熱性芽胞菌の増殖を抑制する
   - ナイシンとは
   - 応用例1:食肉製品
   - 応用例2:チーズ
   - ナイシンの使用基準


保存料・日持向上剤が必要とされる理由

日本では単身や共働き世帯の増加により、調理済みの惣菜や加工食品の購入頻度が増えています。
しかし、惣菜や加工食品は家庭の調理や飲食店で食べる場合と比べて、調理されてから消費者が口にするまで時間がかかるため、微生物による腐敗のリスクが高くなります。食品の腐敗の原因として、乳酸菌や耐熱性芽胞菌の増殖があります。また、食中毒を引き起こす微生物として黄色ブドウ球菌やリステリア菌のほか、加熱調理後も残存してしまう耐熱性の強いセレウス菌もあり、場合によっては食中毒のリスクも高くなります。
これら腐敗や食中毒を防ぐ手段の一つとして保存料・日持向上剤が有効です。保存料・日持向上剤は、コンビニやスーパーの惣菜および加工食品に活用されており、現在の食品業界を支える役割を果たしています。


食肉製品、チーズ、卵加工品の日持ちの課題

乳酸菌、耐熱性芽胞菌の増殖を抑えにくい

食肉製品やチーズ、卵加工品を日持ちさせるには、腐敗の原因となりやすい乳酸菌や耐熱性芽胞菌の増殖を抑える必要があります。しかし、食肉製品などでは物性や風味の点からpHを下げることができないため、pHが低いほど静菌効果を発揮する有機酸では十分な日持ち効果が得られません。また、たん白の多い食品の場合、保存料・日持向上剤の種類によっては静菌効果が十分に発揮されず、期待した日持ちを実現できない場合がありました。

解決策

ナイシンにより乳酸菌や耐熱性芽胞菌の増殖を抑制する

中性域の食品やたん白の多い食品を日持ちさせる場合は、ナイシンが効果的です。



ナイシンとは

ナイシンは乳酸菌由来のポリペプチドで、チーズ、クリーム、ドレッシングなどの保存料として現在50カ国以上で使用されています。食品のpHやたん白の影響を受けにくい性質を持っており、また、極微量で効果を示すため、食品の風味にほとんど影響を与えることなく、期待した日持ちを実現できます。
ナイシンと代表的な保存料・日持向上剤の特徴を下表に示します。

ナイシンと代表的な保存料・日持向上剤の特徴 解決事例_ナイシン_代表的な保存料.png



応用例1:食肉製品

食肉製品は物性や風味の点からpHを下げることができないため、pHを低くしないと効果を発揮しにくい酢酸ナトリウムやソルビン酸カリウムでは静菌効果を十分に保つことができません。ハンバーグなどでは酢酸ナトリウム等を組み合わせた日持向上剤が使用されますが、乳酸菌や耐熱性芽胞菌の増殖を抑えきれず、食品のpH低下や粘性物質の生成などを伴って腐敗する場合があります。
ナイシンは中性域でも静菌効果を発揮するため、食肉製品においても乳酸菌や耐熱性芽胞菌の増殖を抑えることができます。
ハンバーグの保存試験 解決事例ナイシン ハンバーグ保存試験.png




応用例2:チーズ

チーズは、嗜好性を高めるためにブラックペッパーやハーブなどを配合することがあります。その場合、原料由来の乳酸菌や耐熱性芽胞菌によって腐敗することがあります。日本で使用実績の多い保存料であるε-ポリリジンはたん白に吸着し静菌効果が低下してしまうため、たん白含量の多いチーズでは効果を発揮しにくくなる場合があります。
ナイシンはたん白の影響を受けにくいため、チーズにおいても高い静菌効果を発揮します。
チーズの植菌試験
解決事例ナイシン_チーズ植菌試験.png




ナイシンの使用基準

ナイシンには使用基準が設けられており、使用できる食品と使用量に制限があります。 解決事例ナイシン_使用基準.png

ナイシンは極微量で効果を示すことから、当社では計量しやすい濃度に調整したナイシン製剤「ナチュラルキーパー®」を用意しています。ナチュラルキーパー®については、食品や条件に応じた使用例や保存試験データをご用意しております。下記お問い合せボタンより、お気軽にお問い合わせください。



※掲載データは、当社評価によるものです。ご検討の際には、十分な試験をお願いいたします。
※「ナチュラルキーパー」は当社の登録商標です。

(2022年5月)

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